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中欧・東欧旅行記-2006-

マラムレシュの真髄

「マラムレシュ観光に連れて行くよー!」
宿の主人マティが声をかけてくれた。いつの間にかルーマニア語対日本語でも意思の疎通が図れるようになったようだ。どうしても正確に伝えたい言葉は、ウクライナ系のべっぴんさんでマティの姪のマリアが英語を聞き取ってくれる。15歳にしては英語ペラペラ、かなりたいしたもの。水色と灰色の瞳がめちゃくちゃ綺麗で、ほんと純粋な美人さんだなーと感動していたら、ちょこっとお腹の肉がはみ出している事に気付いた。すばらしい。彼女もれっきとしたルーマニア人だ。

マラムレシュといえば、最も有名なのがサプンツァの「陽気な墓」。車でクラッシュしちゃった人の墓標、ひたすら飲んで、多分肝硬変だったんだろうなーって人の墓標、どれも描かれている絵を見るだけで一目瞭然。付随しているルーマニア語を解読できなくってもノープロブレムなのだ。墓なのにちゃめっ気たっぷり。これでいいのか、ルーマニア正教。でもおそらく世界でここだけなんじゃなかろうか。こんなにカメラのフラッシュがたかれ、こんなに笑顔がこぼれる墓場は。自分も死んだらここに葬ってもらいたいなーとなんとなく思った。

マラムレシュでもう一つ有名なのは、世界遺産の木造聖堂群。釘を使うことなく、全て木材で組まれているらしい。塔のように背の高い教会に一歩足を踏み入れると、鼻をくすぐるヒノキの香り。サプンツァとは対照的に静謐かつ神聖な空気が満ちているような感じがして、思わず背がピンとなった。

家に帰るとご飯の時間。チョルバとママリーガとソーセージ、それとクレープが美味しい。ハンガリーでおなじみのパーリンカやルーマニア特製の地酒ツィカもふるまってくれた。マティ家でつくっているらしい。プラムからつくる蒸留酒だが、あまりにきついアルコールの香りで、果物の匂いなんてなんもわからない。一口飲んだら味はエタノールだった。いや、エタノールを飲んだことはないけれど、きっとこんな味なのだろう。

マティ家では食卓にも民族音楽が流れる。テンポがいいからおどけてノッてみる。ツィカのせいで昼間からすっかり酔っ払いだ。と、お婆ちゃんが手招きする。
「ほら、ダンスするわよ」
「だんすぅー?!無理ですよ。私は踊れないってー!!」

悲鳴むなしくかき消され、なぜか始まるマラムレシュダンス。食卓放り出して踊る踊る、回る回る。アルコールのまわりも一気に加速して、なんかいろいろすごいことになった。一休みしようと思ったら、マティの娘のアナ・マリアが2階へと手を引く。
「どこいくのーー!」
「はい、コレ着て!!」

でてきたのはマラムレシュノ民族衣装。踊りっぷりがナイスだからこれを着ろと。コスチュームチェンジ後、新たにはじまるダンスダンスダンス。お婆ちゃんもママも隣のマリアも一緒になって汗だくで踊り尽くす。踊り尽くす。

果てしなく続くダンスタイムは、食事の支度で一度中断され、夕食後にまた再開されることとなった。滞在1日目にしてマラムレシュの真髄を叩き込まれた気がする。恐るべしルーマニア。この地ではダンスと食事は常にセットなのだ。人は食べ、そして踊り、疲れ果てて眠る。

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