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中欧・東欧旅行記-2006-

ツィカに命救われる

さて困った。待てど暮らせど列車が来ないのだ。ルーマニアの田舎からハンガリー、ウィーン、スロバキアを経由してプラハまで向かう長い道のりの途中で、さっきからえんえんと足止めを食っている。実はまだ、ルーマニアを出られていない。Blajという小さな町の駅で、星空を眺めながら溜息をついているところだ。

ここまでルーマニアの鉄道はびっくりするくらい時間に正確だった。それなのにどういうわけだろう。この最後の車窓の旅に限っては、かつてない待ちぼうけをくっている。10分待っても20分待っても来ない。仕方なくベンチに腰掛けひたすら待つ。もう22時30分をまわっている。夏場といえども山に囲まれたこのトランシルバニア地方の夜は冷える。あまりの寒さに耐えられなくなって、駅員に直接聞いてみた。が、40分遅れだとか1時間遅れだとか、情報が一向に定まらない。

鈴虫が鳴いちゃうくらいの田舎の駅で、こんな時間に駅舎に入れるわけもなく、周りは怪しい酔っ払いとロマと地方原産の不良の輪。しかもこの寒さだ。凍てつく寒風が森から吹いてくる。バックパックから持っている限りの服を引っ張り出して、建物の影に寄り添って、
「寒いよぉ〜。寒いよぉ〜。もぅ死んでしまうよぉ〜」
旅仲間と一緒にぶーぶー嘆きながら待つものの、ちっとも列車はやってこない。さすがにこのままではまずいと判断し、体を温めるものを探す。と、バックの奥から出てきたのは・・・

「あ!ツィカがあるよ!」
でかくてかさばるし、強すぎて味も良く分からないこのエタノールもどきに、本当のところ手をこまねいていたのだが、まさかその日のうちにこいつに命を救われることになるとは。世の中、何が吉なのか分かったものじゃない。寒空の彼方のマティに感謝して、今夜は飲み明かすことが決定。でもアルコール度40度は伊達じゃない。寒いから一気に呑んで、熱くなったら吐き出して、それを繰り返しながら体を温めていく。ありがたいことに2リットル入りのペットボトルいっぱいに命の水はつまっていた。飲んでも飲んでも減る気がしない。

23時を過ぎる頃、ブダペスト行きの列車が遅れに遅れてやってきた。待ってました。ツィカがなかったら、あきらめてこの村に宿を取っていたことだろう。そしたらブダペストに着けないだけでなく、せっかくとった明日のプラハ行きの切符まで無駄になるところだった。貧乏人は生きるか死ぬかの分かれ道でさえ、ぎりぎりを狙うからすごい。だけど今夜は私の粘り勝ちだ!さあ、いい感じに酔っ払ったし、この勢いでぐっすり眠ってしまおう。明日にはモルダウにご対面できるはず。

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