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中欧・東欧旅行記-2006-

魔女を探してオンチェシュティ・その4

マティの姪のマリアが通訳をかって出てくれたので、アヌツァの話を聞くことができた。
「ヴラジトアレなの?」
「そうだよ」
「どんな魔法が使えるの?」
「なんでもできるさ。でももう忘れてしまったよ」
「えぇー?!魔女が魔法を忘れるの?」

なんとこの魔女、御歳92歳!
「どっひゃー!!こりゃ生きてるだけでも魔法だね!」
この人探し、タイムリミットは近かったようで、ぎりぎり間に合ったってところらしい。でも、魔女だしな。100歳は生きるのかもしれない。

「コレ、覚えてる?」
私は例の本を取り出した。アヌツァはとても喜んで、とてもなつかしい、と言った。自分の顔が本に載っているのを始めてみたらしい。実際の取材はこの本が出版されるよりもずっと前で、ここに載っているのは15年も昔の写真なのだと教えてくれた。この本の取材すぐ後、ニッツァは亡くなってしまったのだと。彼女の写真を眺めて、目に涙をためるアヌツァ。

「ほんとに懐かしいわねぇ・・・。ニッツァは魔女としては先輩でね、恋愛成就の魔法が得意だったんだよ」
「どんな魔法だったの?」
「結婚したい相手がいるとするでしょ、その子がニッツァのところにお願いに来るの。そうすると望み通り相手と結ばれるのさね」
「ステキだねー」
「ヴラジトアレは女しかなれないんだよ。魔女の娘が必ずしも魔女になるわけでもない。今はもう私くらいか残ってないんじゃないかねぇ」

最後の魔女。ステキじゃないか。もしかしたら私は、最後の魔女に会えた最後の旅人かもしれない。

「そうだお婆ちゃん、いいものあげるね」
私の旅の必需品であるあるものを取り出して形を作っていく。
「じゃーん!出来た。はい。ジャパニーズ折り紙!鶴っていうんだよ。これはね、ロングライフのシンボルなの。だからお婆ちゃん長生きしてね」

ニッツァは喜んで笑う。小さな島国の魔女っ子がしかける笑顔のWitchcraft。どうかこの村の最後の魔女がずっとずっと幸せに長生きしてくれますようにという願いを込めて。

あまりに懐かしそうに本を眺めるアヌツァをみて、この本はここにおいていく事に決めた。宝物なんだけど、まぁいっか。帰ったらもう一度買いなおせばいい。彼女なら大切にしてくれること間違いなしだし、ずっと大切にしていた宝物をこの地に預けていくっていうのも悪くない気がする。またここに来るきっかけになるかもしれない。本を抱き、会いに来てくれてありがとうとキスしてくれる優しいお婆ちゃんに別れを告げる。ルーマニアの田舎に生きる最後の魔女は、いつまでもいつまでも手を振ってくれていた。

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