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ペルー旅行記-2005-

地に足がついてない生活

ホテルの6階のレストランからはチチカカ湖が一望できる。琵琶湖の12倍の広さがあるというチチカカ湖、海だって言われても納得してしまう広さだ。太陽の息子の初代皇帝とその妹が天から降り立った湖という伝説も、この広さと美しさから生まれた神秘だろう。今日はこのチチカカ湖を廻る。朝8時15分、まずはボートでウロス島に向かった。青い。ボートの上から眺める空と湖が、ただひたすら青い。湖の深さと空の深さ、どっちも負けないくらいの青。ピンと張った空気が、その美しさを際立たせているかのようだ。

ボートが島に着くと、住人たちが手を貸してくれた。赤と青、ビビットカラーな民族衣装に帽子と三つ編み。みんな真っ黒に日焼けしながら、刺繍を編んでいる。観光客向けの売り物にするらしい。全てがトトラでできているという島を歩くと、足の裏には不思議な弾力感が伝わってくる。島に包み込まれている感じがした。家も、船も、壁も柵も全てが葦、トトラ。物見櫓までトトラ。登るのには少し勇気がいるが、上から眺める空と湖はやっぱり深い。バルサというトトラ製の船に乗ってチチカカ湖の島々を巡ってみたが、どの島に行っても子供たちが元気。手持ちのクッキーがすぐに底をついてしまった。

途中、クイを飼っている島に上陸。一応みんなひとかたまりに集められてはいるのだが、とくに柵があるわけでもなく出入りは自由な様子。なんで逃げないのか聞いてみたら、逃げても行くところがないんだと言われた。確かにここは島の上。小屋の中にいたほうが確実にご飯にありつける。でもいつのまにか、自分がご飯になってるってネタがないわけじゃあない。クイは高山地方の貴重なタンパク源らしい。相棒はクイの実物が気に入ったらしく、柵の前に座ったまま瞑想に入ってしまった。どうか、丸焼きの事を思い出しているのではありませんように。

島の上に建っている病院や学校なんかもある。全部湖の上に浮いてる。ここでは地に足をつけた生活なんてものは必要ないらしい。ある意味理想的だ。気持ちいい風に身をゆだねながら、バルサにのり島々を渡り歩く。観光客がきたら自慢の刺繍を売ってみる。買ってくれなくても、それはそれ。通り過ぎていく人たちと、通り過ぎていく風と、この青い世界で生きていく。そんな生き方、悪くないと思った。でもトトラでできた家の裏に太陽光発電のソーラーパネルが張ってあるのを見かけると、ちょっと淋しくなってしまう。まあ合理的だとは思うが。

飛行機の時間までまだしばらくあるというので、近郊のシユスタニの遺跡へ足をのばした。シユスタニはミイラを安置した円筒型の石の墓が点々と残る遺跡。プレインカ時代からインカ時代にかけてここが神聖な場所だったと推測できるような遺跡がたくさん残っている。プレインカとインカではやはり墓のつくりが違うのが見てとれる。インカ時代になると石組みの技術が大きく進歩している。蛇の頭を示すといわれる石なんかも有り、ビラコチャ信仰だけじゃないインカの宗教観が垣間見えた。蛇は墓の守り神だったらしい。墓の中に入ってもいいらしいので這いつくばって墓に侵入してみる。盗掘者の気分。ひやっと涼しい墓の中から崩れた天上を見上げると、今まさに高い空から落っこちてきたような気がする。しっかし、墓に片足突っ込んでる自分が墓荒らしとは、なかなかシニカルだった。

遺跡の裏手に広がるウマヨ湖はチチカカ湖に負けず劣らず真っ青な湖だった。遠くに小さな島が見えるが、絶滅危惧種ビクーニャの保護区らしい。遺跡の中で一匹だけビクーニャを見かけたが、リャマよりも可愛い目をした小さな動物だった。アルパカよりもラクダに近いか。

のんびり遺跡を回ったので食事をとる時間がなくなったらしい。かわりに現地の民家でおやつをご馳走になった。私のような貧乏旅行者は有名レストランより、こっちの方がずっと心躍る。まず濃厚な味わいのチーズを一切れ。パンはその場で焼いてくれた。細長い楕円のおせんべいに良く似ている。芋も田舎で食べた事の有るようなないような、そんな懐かしい味。もちろん味付けなんて一切なし。泥と土でできた小さな一軒家に入れてもらった。ベッドのようなスペースは一つだけだった。屋根の上には牛の守り神プカラ。まるで沖縄のシーサーみたいだ。家事はお母さんが切り盛りしていてお父さんは庭で畑仕事をしている。耕具を見せてもらったら石と木の手作り作品だった。たくましい。

ローカルファミリーにさよならを告げたら、フリアカの空港まで一気に突っ走る。16時25分、フリアカ発リマ行のLANPERU111便に滑り込みセーフ。空港が混んでいたせいで少し焦った。少し高山病気味だった相棒もこれで元気になるはず。明日はリマからナスカへの大移動だ。私もそろそろ体が疲れてきたぞ・・・。

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