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ギリシャ旅行記-2003-

イラク戦争開戦。その時アテネでは…

イラク情勢がやばいらしい。ディオニソス劇場の客席跡に腰掛けてステージを眺めながら、のんびり日向ぼっこしていたら、いきなり上空に数機の戦闘機が現れた。ディオニソス劇場 それに続いて軍事モノっぽいヘリも何機か飛び去る。日本出国前から戦争が近いかもしれないとは言われていたが、ここにきて何か動きがあったようだ。

すぐに家に電話して状況確認。日本もアメリカを支持することを正式に発表したそうだ。もしかしたら今夜あたりには開戦かもしれない、と親は心配気味。こっちは大丈夫だから、と電話を切ったがのだが…。ここにきて急に不安が襲う。

「戦争始まったら飛行機はちゃんと飛ぶの?私たち帰れるの??」

帰国の便は明後日発。もしかしたらやばいかもしれない!!どうやら空爆は今夜から開始される模様で、そうなってくると帰りの便になんらかの影響が出る可能性も・・・。

アクロポリスにて街に出てアクロポリスの丘に登ると、飛んでいく戦闘機をバックに神殿の姿を撮影する修学旅行生たちがいた。パルテノン神殿は確かに美しいけど、背景に戦闘機ってどうなんだろう。こんな時、ギリシャ国民は心配じゃないのかしらと思う。イラクとギリシャは近い。しかも陸続きじゃないか。悠長に犬の散歩なんかしてるおじさんたちを見る限り、この街が今すぐパニック状態になるような状況ではないらしい。でもこんな事態自分は初めてだし、何かあったときは冷静に行動しようと3人集まって話し合った。

翌朝、朝ごはんを済ませてTVをつけたらイラク爆撃について何か言っている。英語力がないのが痛いところだが、TVにうつる映像を見る限り実際に戦争が始まったようだ。日本語対応のネットカフェで情報収集。イラクでは化学兵器の使用に備えて、マスクが配られている地区もある。日本はというと、私のバイト先の某テーマパークではテロ防止にバッグの持ち物検査が始まったらしい。

とにかく自分たちはまず、明日の飛行機の心配をしなければ。今夜も大規模な空爆が予想されるという。バクダット上空は通れない。どの情報がどれくらい信頼できるものなのか分からないから不安になる。でも、ただ不安がっても何もできないというのが現状。

シンダグマ広場前の国会議事堂昨日とはうって変わって、今日はアテネの街が少しざわついている。オモニアでは戦争反対のビラをまく車が行ったり来たりしていた。シンダグマでは学生たちによる大規模な反戦デモが広場に向かって歩いていくのを見た。ギリシャは民主主義政治の生まれた国。現代に至っても政治に対する意識の違いを感じさせられる。ただ、人は流されやすい生き物だから怖い。こんな時だからこそ、一歩引いた視点で周りが見れる人間になるべきなんじゃないか?デモ隊が過激な行動を起こさぬうちに、私たちは広場を後にした。

「明日出国」というタイミングで戦争開始というハプニング。でもこればっかりはどうしようもない。今日がアテネで自由に動ける最終日だと思うと、安全なホテルでじっとしている気にもなれない。人の多い街なかを避けて、フィロパポスの丘に登ってみた。パルテノンが一番美しく見える場所だ。ここに来られるのも今日が最後。こんなに絶景まで徒歩30分というアテネ市民が羨ましいと思う。明日からは見たくてもこう簡単にはいかない。アジア周りで片道2日はかかる。

フィロパポスの丘から眺めるパルテノン神殿名残惜しくて仕方ない。帰りたくないね、と3人でひとしきり駄々をこねあう。飛行機、もう飛ばなくていいんじゃない、なんて言ってみたりして。ここ数日、毎日毎日飽きずに見てた風景だからなおさらだ。
結局最後は、見たくなったらまた来ればいいってことで3人しぶしぶ納得した。大事なのは実際ここに来て、自分の眼でこの景色を見れたことだ。それだけでパルテノンが歴史の資料集の上だけの存在ではなくなった。ここにある。2日かかろうが、1週間かかろうが、青色の絵の具を溶かしたみたいな海も存在感抜群の白い神殿も、来ればここにある。戦争とか環境汚染とか、私たち人間の醜い行いで失われてしまうことさえなければ。ソクラテスが現代に生きていたら何て言っただろう。せめて今夜の爆撃ができるだけ小規模になってくれますように。

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